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すべての能力を底上げする!自己肯定感を高めよう



自己肯定感とは

 

皆さんは、自分のことが好きですか?

この質問をすると、日本人の多くがなかなかYESと答えられないそうです。これは、日本人の自己肯定感が他国の人に比べて低い傾向にあることに原因があります。

 

弊社紬が以前から育成に力を入れている子どもの「非認知能力」(参照コラムはこちら)。その非認知能力の中でも最も重要とされているのが、自己肯定感だといわれています。

 

自己肯定感とは、すべての能力を底上げし、土台となる力。

今回は、人生において一番大切ともいえるこの自己肯定感についてお話ししたいと思います。

 

まず、自己肯定感は、「自尊感情」と「自己受容感」の2つに支えられています。(※出典1)

 

●自尊感情とは…

良い時も悪い時も無条件に自分を好きでいられる気持ち

 

●自己受容感とは…

自分をありのままに受け入れること

 

自己肯定感とは、どんな自分もありのままに受け止め、なおかつ自分を好きでいられる気持ちのことをいいます。経歴や経済力、長所短所などにかかわらず、自分を好きでいられる「根拠のない自信」のことなのです。(※出典2)



自己肯定感が高いことによるメリット

 

それでは、なぜ自分を好きでいる気持ちが大切なのでしょうか?

自己肯定感が高いことによるメリットは、以下のことが挙げられます。

 

●他人の評価や環境に振り回されずに自分の価値を認められる

●日々のタスク(勉強や仕事など)をこなすことが苦にならない

●「やってみたい!」という好奇心が湧き、新しいものごとに積極的にチャレンジできる

●思考に制限が生まれず、興味や関心が広がり、自由な発想ができる

●失敗したり、悪い結果が出たりしても落ち込むことが少なく、切り替えが早い

●トライ・アンド・エラーができるから、問題を早く解決できる

●自分が好きだから、人のことも認められる

※出典2 P93より引用

 

以上のようにあらゆる面にプラスの効果があり、その結果、さまざまな能力が底上げされるのです。



自己肯定感が低下してしまうのはなぜ?

それでは、自己肯定感の低下はなぜ起こるのでしょうか?代表的な例を挙げてみましょう。

 

原因①他者評価に頼る

自己肯定感の高い人は、「自己評価」に長けているといわれています。自己評価とは、文字どおり自己を評価すること。自分の優れている点や改善点を自分で振り返り、評価することです。自己肯定感は他者に認めてもらうことで高まるものではないため、自己評価ができるということはとても重要といえます。

 

一方、自己肯定感の低い人は、この自己評価が不得意な傾向にあり、「他者評価」に頼りがちです。他者評価に頼ると、自分以外の他者の評価基準で自分の価値を決めるため、その都度自分の評価が変わってきてしまいます。その結果、他者から高評価が得られなかったり自分より優れた人がいたりすると、途端に自己評価が下がってしまい、自己肯定感も上がりません。人の目を気にしがちな日本人に自己肯定感が低い人が多いというのも頷けますね。(※出典2)

 

原因②先取り学習のやりすぎ

「先取り学習」とは、漢字や計算をはじめとしたさまざまな学習を学校で学ぶ前に先取って行うこと。我が子が学校に入って困らないようにと幼児期から積極的に行っている親御さんも少なくないのではないでしょうか。もちろん、先取り学習は悪いものではありません。事実、学校での学習につまずかないことで自信を持てるという子どもも多くいることでしょう。

 

ここで問題視しているのは、先取り学習の“やりすぎ”です。子どもの年齢やキャパシティ以上の学習をさせると、その難しさのあまり子どもに自信をなくさせ、「自分は勉強ができない」という劣等感を植え付け、自己肯定感の低下につなげてしまいます。そのため、本人が望まない限り、度を超えた先取り学習は必要ないといえるでしょう。(※出典2)

 

原因③兄弟姉妹やお友達、自分と比較する

他の子や幼少期の自分と比べてできないことがあると、つい比較して指摘してしまいがちですが、これは子どもの自己肯定感を低下させてしまいます。大人でさえ、他の保護者や同僚などと比べられると悲しくなってしまいますよね。他人と比べて子どもを評価すると、自分自身を落ちこぼれだと思い込むようになってしまうため、「やってみよう!」というチャレンジ精神までも失わせてしまうのです。



自己肯定感を高める方法

 

それでは、子どもの自己肯定感を高める関わりとはどのようなものでしょうか?こむぎで行っている工夫も一緒にご紹介します。

 

無条件の愛で子どもの「ありのまま」を受け入れる

※出典3 図をもとに作成

 

上の図を見ても分かるとおり、子どもの世界は家庭から幼稚園・保育園、○○市、○○県、やがては国(日本)へと広がっていきます。そして、それらの影響は内側にいくほど強くなり、家庭や幼稚園・保育園といった身近な環境がより重要であることが分かります。(※出典3)

 

そのため、家庭では保護者が、幼稚園・保育園では教諭や保育者が、子どもの「ありのまま」を受け入れてあげることが大切です。精神的な基盤となることで、これから子どもが自分の自己肯定感を高めていくベースができるのです。

 

子どもといると、つい叱ってしまうことも多くなりがちですが、保護者や保育者は、無条件の愛を言葉や態度で伝えましょう。「どんなあなたも大好きよ」と話したり、ぎゅっと抱き締めたりといった行動は、子どもに安心感を与えることができます。

 

否定語は使わず、具体的に伝える

まず、子どもへの言葉かけで重要なのは、なるべく否定語を使わないということです。特に「あなたはだめな子ね」というような人格そのものを否定するような言葉はNGです。

 

例えばこむぎでは、子どもを褒める時も、どんなところが良かったのか具体的に褒めるようにしています。この時大切なのは、結果だけではなく過程を褒めることです。子どもが努力したことや、工夫したことを褒めることで、子どもは自分の頑張りを見ていてもらえたと嬉しくなり、さらにこれからも頑張ろうと思うことができます。

 

さらに、いつもできていることを褒めるということも忘れてはいけません。「できて当たり前」ではなく、褒める基準のハードルを下げることで、自己肯定感が低い子も大人の言葉を自然と受け入れられるようになっていくでしょう。

忙しい毎日の中ではつい見逃しがちですが、一瞬の出来事でも気づいてあげられるようにしたいものですね。

 

また、こむぎでは、してほしいことを具体的に伝えるようにもしています。例えば、走ってはいけない時に走ってしまった場合、「走ってはだめ!」と否定するのではなく、「走らずに歩こうね」と、してほしいことを伝えるという方法です。この時、子どもが歩いている絵のカードなどを使うと視覚からも伝えることができ、効果的です。

 

子ども一人ひとりに合った課題を決める

子どもの個性は十人十色。できることも、できないことも、それぞれ異なります。そのため、目標や課題も一人ひとりに合わせて定める必要があります。

高すぎる目標は、達成までの失敗が増えるため、自己肯定感を低下させてしまう恐れがあります。目標や課題はその時の子どもの能力に合わせて個別に設定し、成功体験を積み重ね、自己肯定感の向上を目指しています。

 

概念形成で自分に自信を持たせる

 

こむぎでは、職員がCREYONを学び、(CRAYONプロジェクトについてはこちらを参照) 子ども達の概念形成に日々取り組んでいます。

子どもが形成していく概念には、視覚概念、聴覚概念、感覚概念、言語概念、数概念と大きく分けて5つの概念があります。(概念形成についての詳細はこちらを参照)これらを身につけていくと、日々の活動の中で子どもの「わかった!」が増え、それらに比例して保育者に褒められる機会も増えていきます。これも成功体験です。そうすると、子ども達は自信を得ることができ、さらなる概念形成や自己表現につながっていくのです。



「自分を好き」と言える子に

最初の章でも述べたように、自己肯定感とは、どんな自分もありのままに受け入れ、自分を好きでいられる気持ちのことです。現代というVUCAの時代(目まぐるしく変化を繰り返し、不安定で複雑かつ物事の良し悪しの曖昧な社会)を生き抜いていくためにも、子どもには自信を持って自分を好きでいてもらいたいものですね。こむぎでは、これからも、自己肯定感の向上を目指しながら、子ども達の「自分を好き」という気持ちを大切に育てていきたいと思います。

 

 

【参考・引用文献】

1:ベネッセ教育情報「親の自己肯定感が低いと子どもはどうなる?ボーク重子さんに聞く!これからの子どもを幸せにする「非認知能力」の育み方~Lesson2 自己肯定感」https://benesse.jp/kosodate/202112/20211226-1.html(参照2024-5-21)

2:中内玲子(2020年)『シリコンバレー式 世界一の子育て』フローラル出版

3:韓昌完(2023年)『誰もが優秀児になれる!CRAYONプロジェクトの実証』さくら舎